元ハンブルク北ドイツ放送交響楽団首席奏者イエルーン・ベルワルツ(トランペット)のCDが日本アコースティックレコーズから発売されている。
内容は以下の通り。
バロックから現代音楽、ジャズまで、時代とジャンルを超越し、高い技術と繊細な音楽性に裏打ちされた、確かな音楽的な説得力。
細川俊夫:トランペットとピアノのための「霧のなかで」 世界初録音。
【タイトル】
トランペット・テールズ/イエルーン・ベルワルツ & 中川賢一
【曲目】
1. テオ・シャルリエ:36の超絶技巧練習曲より第2番 *
2. 細川俊夫:トランペットとピアノのための「霧のなかで」(2015)
3. R.ロジャース=L.ハート:マイ・ファニー・ヴァレンタイン
4. ジョルジェ・エネスク:トランペットとピアノのための「伝説」
5. 武満徹:径 -ヴィトルド・ルトスワフスキの追憶に- *
6. テオ・シャルリエ:36の超絶技巧練習曲より第13番 *
7. リゲティ・ジェルジュ:マカーブルの秘密の儀式
8. ジョージ・ガーシュウィン/T.ドクシツェル編曲:ラプソディ・イン・ブルー
9. テオ・シャルリエ:36の超絶技巧練習曲より第6番 *
*トランペット・ソロ
【演奏者】イエルーン・ベルワルツ(トランペット)、中川賢一(ピアノ)
【品番】NARD-6004
【定価】¥3,000 (+税)
【発売日】2016年6月21日(火)
【録音】2015年11月5~7日 東大和市民会館「ハミングホール」
【特記事項】ルビジウム録音/HRカッティング
<イエルーン・ベルワルツのメッセージ>
このCDを制作する上でのモットーは、多様で変化に富んだ選曲です。これを通して、私のレパートリーの一部を紹介できれば幸いです。
私は、長年、音楽活動の一つとして、現代音楽を演奏することに重きをおいてきました。このCDでも、武満徹、ジョルジュ・リゲティ、細川俊夫を取り上げています。
録音に先立って、作曲家細川俊夫本人に、2014年9月に初演をしトランペット協奏曲「霧のなかで」(トランペットとオーケストラための)を、トランペットとピアノのために編曲していただきました。
この協奏曲は、もともと、ヘルマン・ヘッセの同名の詩から着想を得ていて、トランペットとピアノの編成では、ピアノの奏でる音楽が、ヘッセの詩歌の中で語られる森を象徴しています。ピアノの全音域をくまなく網羅し、繊細な高音域のハーモニーと勇ましい低音域のオクターブが、絶妙に絡み合います。
一方、トランペットは、詩中の『人』の様々な考想を表現します。弱音器を用いて、ほとんど「聴き取れない」音で(もしくは「感じ取ることのできない」音で)、神秘的な幕開けを演じます。
悠々と、極めて繊細で、それは一般的にイメージされるトランペットの音楽とは程遠いものでしょう。
曲全体を通して、長いフレーズは、フォルテッシモで奏でられるクライマックスに達するまで、途切れることなく演奏することを要求されます。それは音楽家にとって特別な挑戦です。
細川俊夫は、トランペットを抒情的で寛美に鳴らす術をよく心得ています。曲の終わりに近づくにつれ、楽器の音、肉声、肉体が一つになっていくのです。
もともと大編成のために書かれたこの楽曲を、室内楽の編成で、新たな大作へと進化させることができたことに、大変嬉しく思っています。細川俊夫さん、ご厚意に感謝します。
このCDでは、私のリサイタルで頻繁に演奏してきた、ベルギー出身のテオ・シャルリエの『エチュード・イン・スタイル(36の超絶技巧練習曲)』も収録しました。
彼の『エチュード』はロマンチックなメロディが特徴的です。時に繊細で、時に力強く、この二面性が、難度の高いテクニックを要するパッセージに乗せて、交互に織り交ざります。この曲は、あらゆる音色を駆使することで、トランペットが独奏楽器としての柔軟性を持ちうることを証明し、また、トランペット独奏の名曲の一つとしても、数えることができるでしょう。
他、エネスクの『伝説』や、ガーシュウィンの『ラプソディ・イン・ブルー』、『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』は、リサイタル・レパートリーの中でも、思い入れの深い曲です。
イエルーン・ベルワルツ(トランペット):
1975年ベルギー出身。
レパートリーはバロックから現代音楽、ジャズに至るまでの様々な時代や様式の作品を含んでいる。
トランペット奏者としての活動をしながら、ゲント王立音楽院でジャズ・ボーカルを修了。
トランペットと声、クラシックやジャズ、その他様々なジャンルとのユニークな組合せを自在に操る、稀有な音楽家である。
トランペットの巨匠、ラインホルト・フリードリヒに師事。「ヨーロッパの若きトランぺッターコンクール」「プラハの春国際音楽コンクール」「モーリス・アンドレ・トランペット・コンクール」などで受賞。
ベルギーのアルス・ムジカ、ラインガウ、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン音楽祭など世界各国の音楽祭に招聘され、2005年細川俊夫のトランペットソロとアンサンブルのための作品「旅 VII」を初演。
また、ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団、ハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー、ミュンヘンシンフォニカー、ジュネス・ミュジカーレ・ワールド・オーケストラ、フランドル交響楽団などと、アラン・ギルバート、ヤコブ・クライツベルクらの指揮のもと共演。
2013年サントリーホールで、準メルクル指揮東京フィルハーモニー管弦楽団とともに細川俊夫のトランペット協奏曲「霧の中で」を世界初演。
同作品は尾高賞を受賞、2014年に東京でNHK交響楽団、キールとハンブルクでマティアス・ピンチャー指揮ハンブルク北ドイツ放送交響楽団により再演された。
1999年から2014年までハンブルク北ドイツ放送交響楽団の首席トランペット奏者。
2008年よりハノーファー音楽演劇メディア大学教授。
中川賢一(ピアノ):
桐朋学園大学音楽学部でピアノと指揮を学び、ベルギーのアントワープ王立音楽院ピアノ科首席修了、フォルテピアノ、チェンバロも習得。
1997年オランダのガウデアムス国際現代音楽コンクール第3位。ヨーロッパ国内外、北米、南米、アジア等の音楽祭に出演するなど、世界各地で演奏活動を行う。
NHK-FM、NHK-BS 出演多数、新曲初演も多い。
O.メシアン、J.ケージ、F.ジェフスキー、武満徹など現代を代表する作曲家作品を演奏し、各方面から絶賛される。
また、ダンスや朗読、アニメーションなど他分野とのコラボも活発。ピアノ演奏とトークを交えたアナリーゼを展開し好評を博す。
現代音楽レクチャーコンサート、未就学児向け音楽会プロデュースも数多く行う。
指揮者としても、東京室内歌劇場、東京フィルハーモニー管弦楽団、仙台フィルハーモ ニー管弦楽団、広島交響楽団等と共演。
アンサンブル・ノマドのメンバー。
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